表3.37 ASTM規格における5456−0合金の機械的性質
(2)艤装用合金
表3.38は、艤装に用いられるアルミニウム合金のJIS規格における化学成分範囲と製造区分である。表3.39〜3.43は、それぞれの製造区分において使用される厚さ(又は径等)を考慮して抜粋した機械的性質の規格値を示す。ただし、表3.43の鋳物材は、規格に指定された試験片形状に鋳込んだものの値であり、鋳物品実体から採取した試験片の値は規格値の80%程度20)とみなされる。
艤装用に展伸材を選ぶ場合は、母材としての引張強度のみに着目せず、部材となるまでの工程、例えば、曲げ加工や溶接、表面処理の有無、継手の強度、或いは取付け方法等も勘案して材質を選定することが大切である。
(3)溶接棒及びワイヤ
表3.44は、船舶用アルミニウム合金に対する溶接棒(ティグ溶接用、記号BY)並びにワイヤ(ミグ溶接用、記号WY)の選定指針であり、それらの化学成分を表3.45に示した。
5000系合金を溶接する場合には、溶接棒又はワイヤ(以下、溶加材という。)に母材よりも含有Mg量が若干多いものを用いる。5083合金板は5183合金溶加材を用いて溶接すると、5356合金溶加材の場合よりも溶接継手の引張強さが幾分高くなる。これがLNG関係や高速艇の建造等に前者を使用する理由の一つであるが、6N01合金等への適用も含めると5356合金溶加材を用いた方が現場管理は容易となる。アルミニウム合金漁船の建造における溶加材は、後者を一般に使用している。5456合金の溶加材は5083合金の場合と同じである。両合金の溶加材を米国の建築関係では5556合金とする例もあるが、海水に浸す場合には用いないようである。6061合金など6000系合金の溶加材には4043合金を使用するのが望ましいが、5356合金溶加材を用いても差し支えはない。このような観点から船体構造用アルミニウム合金と溶加材の組合せを整理したのが表3,46である。
表3.47は、各溶加材を用いた場合における突合せ継手の引張強さ(最小値)である。また、表3.48は、母材の板厚に対して使用する溶接棒又はワイヤの標準径を示す。
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